順番が逆なのかもしれないけど、『ロスト・イン・トランスレーション』を買って以来、いつかは観たいなと思っていたソフィア・コッポラ監督の処女作『ヴァージン・スーサイズ
』をようやく観ました。最近はすっかり引きこもり状態なので、DVDを観る時間がたくさんあるのです(笑)。
『ロスト・イン・トランスレーション』を観たときも思ったけど、不安や虚無感の具象化が非常にうまい。涙が出るほどうまい。『ロスト・イン・トランスレーション』はどちらかというと虚無感を持った二人が出会うラブストーリーという感じだったけれど、『ヴァージン・スーサイズ』は、とにかく虚無感、不安、孤独がテーマ。役者の表情や台詞でそれを表現するのではなく、映画というメディアを知り尽くしたかのような空間の使い方、音の使い方、カメラワークだけでそれを表現してしまう。あまり多作なタイプな人ではないみたいだけど、それだけに非常に内容が濃い。
大まかなストーリーは下に書きます(ネタバレ注意)が、なんといっても「うまい」というか、すごいと思ったのが、男の子たちと電話で音楽を聴かせあうシーン。外出禁止令がでてから、ロックのレコードはすべて母親に処分されてしまう。彼女たちの方から男の子の家に電話をかけ、電話越しにレコードを聴かせてあげる。そのシーンの中に、不安と安心、虚無感と満足感がものすごい密度でつまっている。あのシーンは一度でも観る価値アリ。
ソフィア・コッポラ監督は、音楽の趣味がものすごくいい。というか、僕好みというだけかもしれないけど。『ロスト・イン・トランスレーション』のサウンドトラックでは、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズが音楽を担当しているし、この『ヴァージン・スーサイズ』でも、フランスの音響系アーティストAirがスコアを担当している(サントラはこちら
)。それぞれのサントラだけ聞いても、ストーリーの大筋がわかってもらえると思うよ。
以下はネタバレになりますので、楽しみにしている人は読み飛ばすようにしてください。
主人公は、リスボン家の5姉妹。父親は数学教師、母親は専業主婦という家庭で育ったすべて年子の5姉妹。「女の子はこうあるべき」という意識が強すぎたのか、末っ子が思春期に自殺してしまう。
自殺をきっかけに、じょじょに両親は男女交際についてオープンな姿勢をとるようになるが、条件付きで認めた学園祭パーティーへの参加で門限を破ったことで、5姉妹は外出禁止令を出されてしまう。彼女たちにあこがれていた男の子と、部屋のあかりを使ってサインを送るなどして、外の世界とのコミュニケーションをとろうとするが、彼女たちの閉塞感は増すばかり。
限界に近づいた頃、男の子たちに「助けて」のサインが。両親が寝ている隙に家出を試みる計画を知らされる。彼女の家に呼び出された男の子たちが部屋にあがってみると、姉妹はすべて自殺していた...。そして呼び出した彼女もまた、ガレージで自殺をする。
彼女たちの閉塞感や虚無感、不安を、男の子たちの回想というかたちでストーリーを追い続ける。
とにかく、若手の監督としては希代の才能の持ち主だと思う。今後もこの監督の作品は要チェックということで。
出演: ジェームズ・ウッズ, キャスリーン・ターナー, その他
監督: ソフィア・コッポラ
・DVD (2001/02/02発売)
・リージョン 2 (日本国内向け)
・NTSC
・ドルビー
・カラー
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